フィリピン、監視システム導入事業における中国の入札を保留

フィリピン、監視システム導入事業における中国の入札を保留

FORUMスタッフ

ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、2019年2月、フィリピン議員等により中国製技術製品を使用する監視カメラ導入計画への歳出が阻止され、国家安保リスクに関する調査が開始された。同プロジェクトにより中華人民共和国(中国)がフィリピンを偵察することが可能になると、反対派は危惧している。

同決議案を起草したフィリピンのラルフ・レクト(Ralph Recto)上院議員は、「スパイ行為やデータの安全性に関して、世界中で中国製技術に懸念が持たれている」とし、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に対して「監視システムが本当に必要なら、中国抜きでできないものか」と語っている。

英字新聞、フィリピン・デイリー・インクワイヤラー(Philippine Daily Inquirer)のウェブサイト、inquirer.netによると、レクト上院議員はまた、同プロジェクトにより、領有権についてフィリピンとの間で紛争が発生している南シナ海における中国の主張に対する懸念が強まるとも述べている。

2018年12月、国家予算審議中に同議員は「セーフ・フィリピン(Safe Philippines)」プロジェクトとして知られる400億円相当(4億米ドル)の同取引に対する懸念を表明した。これは、2018年11月の習近平(Xi Jinping)中国主席の比訪問時に、フィリピン自治省とCITCC(中国通信建设集团有限公司)の間で締結された契約であると、ザ・フィリピンスター(The Philippine Star)紙は報じている。

この取引によりCITCCに部品を供給することになるファーウェイ(Huawei Technologies Co. Ltd.)は、他国にインストールされているハードウェアとオペレーティングシステムにスパイウェアを埋め込んだという前科があることから、2018年、米国はファーウェイおよびZTEといった他の中国企業の製品を政府で使用することを禁止している。オーストラリアとニュージーランドも、同企業の特定ネットワークへの接続をブロックしている。inquirer.netが報じたところでは、CITCCはフィリピンに主要電気通信システムを構築する予定となっている国営の中国電信(China Telecommunications Corp.)の関連会社であり、この中国電信はミスラテル・コンソーシアム(Mislatel Consortium)と提携しているという関係がある。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ファーウェイはこの5Gネットワークにも関わっている可能性が高い。

「セーフ・フィリピン」プロジェクトでは、向こう2年半でマニラおよびロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)比大統領の地場であるダバオの公共広場、交差点、ビジネス地区、テクノロジーパーク、住宅地、スタジアムに1万2,000台の閉回路テレビ(CCTV)カメラを設置することを計画していると、さまざまなメディアが報じている同ビデオシステムは、顔認識ソフトウェア、さまざまなデータ記録、分析ツールを組み合わせて犯罪対策に利用するものとされている。

ザ・フィリピンスター紙によると、同プロジェクトにより「市民の良好な生活と成長に向けた社会経済の安定性が保証される」とCITCC側は主張している。inquirer.netが報じたところでは、ローレン・レガルダ(Loren Legarda)比上院議員は、同プロジェクトは犯罪の15%減および応答時間の25%短縮を目指すものであると述べている。

しかし、反対派は情報がどのように利用されるのかを懸念している。また、同ウェブサイトには、2018年12月にレクト上院議員は「中国が監視情報、PNP(フィリピン国家警察)データベース、[他の] フィリピン国民に関するビッグデータにアクセスできるようになる。後で痛い目に遭うのは我々である。とんでもないことだ」とするテキストメッセージを発信したと記されている。

米国が資金援助するNGO団体、フリーダム・ハウス(Freedom House)が最近発行したインターネット上の自由度に関する報告書「Freedom on the Net 2018」では、「世界の重要な電気通信インフラ構築事業を中国企業が請け負う事例が増えていることから、合法か法制外の方法かを問わず、中国の諜報機関がグローバルなデータにアクセスしやすくなる可能性がある」と警告している。たとえば、2018年1月、アフリカ連合(AU)の安保担当者は、自国の機密データが5年間にわたり毎日上海に転送されていたと報告している。同報告書によると、中国は200億円相当(2億米ドル)を費やして、コンピュータネットワークを含め、エチオピアのアディスアベバに所在するアフリカ連合の新本部を建設している。

フィリピンを拠点とするオンラインニュースサイト、rappler.comが2018年12月に配信したところによると、提案された技術は中国が自国民に用いている「社会信用システム」と同じ監視インフラを使用するものであることから、中国がフィリピンにも同様のシステムを設置する可能性に対する不安の声も上がっている。(写真:北京に所在するショッピングモールの外にあるファーウェイの看板の横に設置された監視カメラ。2019年1月撮影)

同プロジェクトではCITCCが資金の80%を賄い、フィリピン政府は残りの80億円相当(約8,000万米ドル)を負担することになっていたが、2月にレクト上院議員の決議案により事実上この分の歳出が阻止された。ドゥテルテ比大統領が拒否権を行使することが計画を進める唯一の方法であると、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

ザ・フィリピンスター紙によると、2018年12月、こうした中国からの融資は商業的な性質のものであるため、フィリピンにとって不利益となる可能性があるとして同議員は懸念を表明している。

中国企業はバングラデシュ、ビルマ、カンボジア、ケニア、メキシコ、ネパール、ナイジェリア、パキスタンなど、少なくとも世界38ヵ国にインターネットやモバイルネットワーク機器を設置していると、フリーダム・ハウスの報告書は述べている。「社会秩序」に対する脅威を特定する目的で、人工知能と顔認識を組み合わせたネットワーク監視システムの導入事業をファーウェイや云从科技(CloudWalk)などの中国企業に委託する国はますます増加している。

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