中国の領土買収に警戒心を強めるフィリピン指導者と国民

中国の領土買収に警戒心を強めるフィリピン指導者と国民

FORUMスタッフ

比スービック湾に位置する大規模造船所の運営企業が会社更生法適用を申請し、裁判所命令により同工場が管財人による管理下に置かれた後、フィリピン指導者等は同工場をフィリピン管理下に維持するための政策を推し進めている。一部の報道によれば、中華人民共和国(中国)の国営企業1社を含む中国系企業2社が同工場に対する関心を表明しており、中国系企業が同工場を買収する可能性があることから、フィリピン安保に対する新たな脅威が出現することになると関係者等は警告している。

フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ(Delfin Lorenzana)国防相は、2019年1月中旬にロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)比大統領やリチャード・ゴードン(Richard Gordon)比上院議員などの関係者等と会談し、韓国系企業の韓進重工業が運営してきたこのフィリピンのスービック湾工場の管理権を維持する計画を策定したと話している。ラジオ・フリー・アジアの提携オンラインニュースサービス、BenarNewsによると、同企業のフィリピン法人は1月初旬に破産を申請している。

マニラ市で開催されたフィリピン外国人特派員協会(FOCAP/Foreign Correspondents’ Association of the Philippines)の年次総会において、ロレンザーナ比国防相は、「フィリピン海軍は、『海軍基地を設置できるため、同地はフィリピンの管理下にすべきである』と提案している」と語っている。BenarNewsによると、ゴードン比上院議員が南シナ海に面する同造船所内にフィリピン海軍本部の移動を推奨している、と報じている。

マニラ市は、今後10年間に船舶をさらに購入することを計画していることから、元米軍基地の敷地内に建設されたこの造船所を管理下に置くほうが有利であると、ロレンザーナ国防相は指摘している。同国防相によると、マニラ市はオーストラリア、日本、韓国、米国といったフィリピン同盟国の事業体に同造船所運営を任せることも検討しているようである。

Maritime Executive(マリタイム・エグゼクティブ)誌のウェブサイトによると、さまざまな安保専門家が中国による同造船所買収に対して警鐘を鳴らしている。これは、中国による投資慣行の傾向を考えると、同造船所買収により中国が西フィリピン海とも呼ばれる南シナ海の支配権を掌握しやすくなるためである。

アレキサンダー・パマ(Alexander Pama)元フィリピン海軍司令官は、Facebook記事で、中国系企業が資産の支配権を獲得することによりもたらされる脅威について警告している。

ニュース報道によると、パマ元海軍司令官は、「この韓進重工業の造船所に関する事象は、事業や財政、またその他の経済上の問題だけではないことに注意してほしい。これは非常に重大な国家安保問題である」とし、「スービック湾の同造船所の所有権を握ることで、その所有者はフィリピンにおける最も戦略的な地理的海事・海上資産の一つに無制限にアクセスできるようになる。これは民間造船所であるとは言え、所有者がここを事実上の海軍基地にしようとしても、それを防ぐ手段はない」と記述している。

また、最近の調査結果によると、フィリピン国民の間でも中国の南シナ海への侵入に対する警戒心が高まっている。2018年9月中旬に18歳以上の成人1,500人を対象として対面形式で実施された国勢調査(Social Weather Survey)をフィリピン統計機構(PSA)の予測による重み付けを用いて分析した結果では、人口の84%が中国の領土侵害に対する政府政策が十分ではないと感じていることが示されている。

また、人口の87%が、中国が領有を主張する南シナ海諸島の領有権をフィリピンが確保することが重要であると述べている。さらに、人口の89%が南シナ海の領土問題を認識しており、中国によりフィリピン人漁師が脅かされていることを65%が認識している。

他国に対する信頼性の高低に関して、調査参加者の回答の比率から分析すると、フィリピン国民は米国を「非常に良好」、日本、マレーシア、イスラエルを「中程度」、そして中国については「不良」と感じている結果となる。

BenarNewsによると、ロレンザーナ国防相は、「フィリピンにとって最も重要な対外安保上の課題は、南シナ海における領土と海事の主張である」と述べている。

また、「海を挟んでフィリピンに対する大国、中国は、当国の沿岸近くを占領し、軍事化している。フィリピンは当国領域のいかなる部分も明け渡すつもりはない」としている。

冷戦終結後、1992年にフィリピン国家主義者等の意向により、米国からフィリピンへのスービック返還が実現した。フィリピンの上院において、「Magnificent 12」として知られる12名の議員の投票により、米国との軍事基地協定の延長が拒否されたのである。rappler.comウェブサイトは、この12名は当時の上院議長のホビト・サロンガ(Jovito Salonga)、上院議員のフアン・ポンセ・エンリレ(Juan Ponce Enrile)、アガピト・アキノ(Agapito Aquino)、ジョセフ・エストラダ(Joseph Estrada)、テオフィスト・ギンゴナ・ジュニア(Teofisto Guingona Jr.)、ソテロ・ローレル(Sotero Laurel)、オーランド・メルカド(Orlando Mercado)、アーネスト・マセダ(Ernesto Maceda)、アキリーノ・ピメンテル・ジュニア(Aquilino Pimentel Jr.)、ビクター・ジガ(Victor Ziga)、ルネ・サギサグ(Rene Saguisag)、ウィグベルト・タニャーダ(Wigberto Tanada)であると報じている。

その後、米比両政府は、他のパートナーシップ取り組みの中でも特にフィリピン軍事基地における米軍再駐留を容認する防衛協力協定を2014年に締結。テロ対策と人道支援、および災害救援機能の開発に焦点を当てた合同軍事演習「KAMANDAG 2」が最近実施されたが、これは両軍の継続的な協力体制を強く表すものである。この演習の名称は、Kaagapay ng mga Mandirigma ng Dagat(海の戦士たちの協力)の頭文字を取ったものである。(写真:2018年10月上旬にスービック湾で実施されたKAMANDAG 2演習中に、強襲水陸両用車で浜辺に上陸した米海兵と比海兵)

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