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「自由で開かれたインド太平洋」に関する議論が大半を占めた第18回アジア安全保障会議

「自由で開かれたインド太平洋」に関する議論が大半を占めた第18回アジア安全保障会議

FORUMスタッフ

独立系シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)の主催により6月上旬にシンガポールで開催された第18回アジア安全保障会議(2019年シャングリラ会合)では、インド太平洋の経済的保障と国家安保を維持する方法について議論が交わされた。

シンガポールの李顯龍(Lee Hsien Loong)首相は基調講演で、中華人民共和国(中国)と米国が紛争を避けなければ、世界経済が危うくなると指摘している。2011年以来8年ぶりに参加した中国国防部部長を含め、同会議には57ヵ国の国防相・防衛相および軍上層部関係者等が結集した。

李首相は、「たとえ短期的でもあからさまな対立が発生すれば、長期にわたる緊張と不確実性により非常に大きな損害がもたらされる」とし、「経済的な観点からは、世界のGDP(国内総生産)が1%、2%低下するだけでは済まない。グローバル化された市場と製品連鎖に多大な障害が発生する」と警告している。

同年次会議では米中の対立激化に対する懸念が浮き彫りとなった。6月1日、李首相の基調講演に続き、米国のパトリック・シャナハン(Patrick Shanahan)国防長官代行はその招待講演で、「中国は他地域と協力関係を結ぶことができる。また、そうすべきである」とし、

「中国は他国の主権を侵害し、自国の意図に対する不信感を煽るような行動は慎む必要がある。中国がそうした行動に終止符を打つまで、米国は同国の近視眼的で狭量かつ偏狭な未来像に対抗し、中国を含む全諸国に利益をもたらしてきた自由で開かれた秩序の維持に取り組む」と主張している。

シャナハン国防長官代行の講演と関連して、米国は2019年6月1日に「Preparedness, Partnerships, and Promoting a Networked Region(仮訳:準備・提携・地域間ネットワークの推進)」と題したインド太平洋戦略報告書(IPSR)を発表している。同報告書には、米国とその同盟・提携諸国が「規模に関わらずすべての国が他国からの強制を受けずに適切な主権を行使することができ」、「地域の持続的成長と連結を促進する」自由で開かれたインド太平洋地域を実現する方法が詳述されている。

同会議がシンガポールで閉幕する前日の5月31日に、シャナハン国防長官代行と中国国防部部長の魏鳳和(Wei Fenghe)上将(写真参照)は面談を行っており、多くのアナリスト等はこれを肯定的な兆候と捉えている。

翌6月2日、同会議における魏国防部長の演説に続いて実施された質疑応答で同国防部長は、「米中間の対立を含め、国家間の紛争・対立は両国民の利益に資するものではなく、また全世界の利益に資するものでもない。過去にマティス長官(ジェームズ・ノーマン・マティス[James Norman Mattis] 元米国国防長官)と会談したことがあるが、そのときには合意に至った。また、シャナハン国防長官代行とも話し合ったが、今回も両国間での理解が得られた。中国と米国は両国共に主要大国であり、お互いに相手を打ち負かすことはできない。両国間の健全かつ安定した関係、特に両国軍隊間の健全かつ安定した関係は双方にとって非常に重要である。地域全体の安定と平和にとって、安定した軍事関係を維持することもまた非常に大切である」と述べている。

南シナ海における人工島の建設と軍事化および同地域における「中国の主権を大々的に主張する広範なアプローチ」を考えると、さまざまな会議参加者が指摘するように、魏国防部長の発言は近年の中国の行動と必ずしも一致するものではない。

同地域における中国の攻撃的な行動に対して米国はこれ以上「二の足を踏む」ことはないと、同会議でシャナハン国防長官代行は断言している。

同国防長官代行は、「同地域全体における国家の重大な利益に対する最大の長期的脅威はおそらく、法治に基づく国際秩序を支持せずに、これを密かに蝕もうとする主体によりもたらされる」と説明している。

同国防長官代行はまた、米国は新たな脅威に対抗し、自国の軍事的優位性と同地域の同盟・提携諸国を守るための能力を維持するために新しい軍事技術に投資していると述べている。

続けて同国防長官代行は、「インド太平洋は米国が優先する地域である。米国は当然関与すべき適切な地域に関与している。米国は同地域に投資している」とし、米国は今後5年間で軍事投資を大幅に増加する予定であると付け加えている。

さらに、「軍事力を通じて政治的目標を達成できると敵対勢力に思わせるような状況を決して作らないことが大切である」と述べた同国防長官代行は、北朝鮮を例に挙げて「同国は未だ途方もない脅威であり、今後も継続的な警戒が必要である」と指摘している。

中国と米国は肯定的に競争できる建設的な関係を構築する必要があると述べた同国防長官代行は、「競争は対立ではない。競争は恐れるべきものではない。国際的に確立された規則に従って行動するのであれば、競争は歓迎すべきものである」と説明している。

シャナハン国防長官代行は、「結局のところ、大切なのは同地域を繁栄させることである。そうするにはその基盤となる安保が必要である。しかし大切なのは隆盛である。これを実現できる機会は存在すると確信しているが、これは規範、規則、コミュニケーションに基づくものでなければならない。米国はこうした要素をしっかりと配置する構えである」と締めくくった。

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