テロ組織の幹部排除に首尾よく取り組むフィリピン軍

テロ組織の幹部排除に首尾よく取り組むフィリピン軍

テロリスト勧誘活動の効果削減を目的とした新たな軍事展開、治安部隊間の協力、一般社会への働きかけを組み合わせた作戦が功を奏し、フィリピンにおけるアブ・サヤフ(ASG)の実効性が著しく低下した。

爆撃、拉致、海賊行為を致命的に繰り返すこの暴力的過激派組織は、1990年代初頭から継続的にフィリピンを脅かしてきた。フィリピン軍(AFP)の報道官は、アブ・サヤフ弾圧を目的とした軍事的努力が実を結んだと発表している。

こうした軍事作戦が人質の解放、テロリストの逮捕や降伏、そしてイスラム国系の過激派組織支持者数の低下に繋がったのである。

フィリピン軍報道官のラモン・ザガラ(Ramon Zagala)中佐はFORUMに対して、「2017年、アブ・サヤフの元指導者であるイスニロン・ハピロン(Isnilon Hapilon)がマラウィ市で戦死した後、アブ・サヤフの脅威レベルが大幅に低下した」と説明し、「今年3月に指導者のアブダールが殺害されてから、同組織の勢力はさらに削がれた。現在、アブ・サヤフの残党に対処している。また、被害をもたらす能力のある外国人テロリストの存在も報告されていることから、この問題についても措置を講じている」と話している。

フィリピンの国営報道機関、フィリピン通信社(PNA)によると、2019年3月、ベニート・マロホムブサールとして生まれたアブダールは、自身が所属していたマウテ(ラナオのイスラム国)が1ヵ月に及ぶ軍事作戦により息絶え絶えとなった末、フィリピン軍に殺害された。マウテはハピロンがアブ・サヤフを率いていた時代に同組織とも繋がりのあった過激派組織である。同通信社が報じたところでは、5ヵ月間にわたり続いたイスラム国関連過激派組織とフィリピン軍との戦闘「マラウィの戦い」の終盤にハピロンは戦死している。2017年10月に終結が宣言されるまで、ハピロンとアブダールは過激派の戦闘員を率いてフィリピン南部の都市を占拠した。

フィリピン国家安全保障会議(NSC)のヘルモヘネス・エスペロン・ジュニア(Hermogenes Esperon Jr.)顧問がFORUMに語ったところでは、フィリピンは現在、暴力的過激主義の防止と対策に取り組んでいる。これは、同国政府が国家行動計画と呼んでいるものである。同計画では、軍事作戦と警察の活動をアウトリーチキャンペーンに組み込んで、過激派の勧誘を受けやすい集団に働きかけるという手段を取っている。

ザガラ中佐の説明によると、軍事作戦にはイスラム教徒が人口の過半数を占めるスールー州へのフィリピン陸軍第1旅団戦闘団(1BCT)(写真参照)の展開が含まれる。

同中佐は、「同展開はテロ対応力を強化することを意図している」とし、「第1旅団戦闘団は従来型、非従来型、非対称的な脅威に対処できる陸軍の緊急派遣部隊である」と説明している。その部隊には情報部隊、戦闘工兵中隊、航空部隊、爆発物処理隊、第1防空砲中隊が含まれる。

同中佐の説明によると、フィリピン陸軍はまた、地域社会の平和推進を目的とした「暴力的過激主義の防止と対策に関する強化作戦」の一環として、スールー州で「平和大使」制度を採用している。平和大使には、著名なフィリピン人俳優、ロビン・パディーヤ(Robin Padilla)やマテオ・グィディッチェリ(Matteo Guidicelli)の名が見られる。

同中佐によると、23人が死亡した2019年1月27日のホロ町の教会爆撃や7人が死亡した2019年6月28日の第1旅団戦闘団指揮所での自爆テロなど、スールー州では恐ろしいアブ・サヤフ事件が発生しているとは言え、今年に入ってからはアブ・サヤフにより拉致された人質をフィリピン軍が身代金を支払わずに救出した事例や40人超のアブ・サヤフ戦闘員の降伏事例など、成功例も増えている。

エスペロン顧問は、「当国は暴力的過激主義の戦闘要素を中和させており、現在、暴力的過激主義の防止と対処に関する行動計画が確立されている」と説明し、「こうした措置により、将来的にテロリストになり得る集団に対処することで、テロリストの育成を阻止している」と述べている。

フィリピン軍は国家警察と緊密に連携しており、2019年6月と7月には奇襲作戦でアブ・サヤフ過激派の容疑者を逮捕している。同顧問は、「フィリピン陸軍はイスラエル国防軍、シンガポール陸軍、オーストラリア陸軍、米国陸軍といった外国の陸軍と共に対テロ演習を実施することで、アブ・サヤフの脅威に対処する能力をさらに強化かつ発展させている」と説明している。

トム・アブケは、シンガポール発信のFORUM寄稿者。

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