多国間提携の相手および安保モデルとしてNATOに期待を寄せるインド太平洋諸国

多国間提携の相手および安保モデルとしてNATOに期待を寄せるインド太平洋諸国

地域の平和と繁栄を確保し、侵略と強制に対抗するため、インド太平洋諸国とその軍隊は北大西洋条約機構(NATO)加盟国や他の新興諸国との多国間同盟にますます高い関心を向けるようになっている。

各国首脳陣は2019年4月に創設70周年を迎えたNATOとより多くの機会で協力体制を図ることで、同地域の安全性強化に取り組んでいる。日本も1990年代初頭から、北大西洋条約に基づくこの同軍事同盟加盟国との協力関係を重視する政策を取ってきた。過去10年の間に日本政府はNATOとの戦略的対話を確立し、2013年には「日本・NATO共同政治宣言」、2014年には「日・NATO国別パートナーシップ協力計画」に署名している。NATOのウェブサイトによると、サイバー防衛や海上安保から人道支援・災害救援(HADR)、核拡散防止研究や防衛研究に至るまで、日本とNATOは広範にわたる分野で協力体制を図っている。

同様に、2005年にNATOのT2(ティア2)国となった韓国も2012年に国別パートナーシップ協力計画(IPCP)を通してNATOと提携を結び、2017年11月には同協力計画が更新している。オーストラリアもまた、2005年にNATOとの協力関係を開始し、2013年2月に同協力計画を通して提携を結んでいる。NATOのウェブサイトによると、ニュージーランドとモンゴル国も2012年にNATOとの提携に合意している。

NATO加盟諸国およびマレーシア、シンガポール、トンガなどの他のインド太平洋諸国は、2001年から2014年にかけて、NATOが統括するアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)の活動に貢献している。

現在一部のアナリスト等から、中華人民共和国(中国)の主張により及ぼされる安全性への影響に対処し法治に基づく国際秩序を維持することを目的として、NATO中国理事会(NATO-China Council)の設立を求める声が上がっている。これは2002年に設立されたNATOロシア理事会(NRC)に類似した形態の理事会と考えられている。

2019年8月にニュース配信サイト「ディフェンス・ワン(Defense One)」に掲載された記事の中で、大西洋評議会のブレント・スコウクロフト国際安全保障センターのバリー・パベル(Barry Pavel)執筆者とイアン・ブルゼジンスキー(Ian Brzezinski)執筆者は、「理事会を設立することで、欧州と北極圏、そしてもちろんアジア太平洋地域でNATOの利益に対する中国の脅威が増大している現状に一層真剣に取り組む同盟が誘発される」と解説し、「中国の関心を引き、同国の攻撃性に対抗するために西側諸国が最も効果的な戦略を講じるには、政治的・経済的分野だけでなく、軍事分野においても大西洋の範囲を越えた協力体制が必要となる。軍事面を推進する上でNATOの右に出る機関はない」と述べている。

ロイター通信が報じたところでは、2019年8月初旬、NATOのイェンス・ストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務局長は、NATOは世界各地における中国の勢力拡大について、NATOの課題となり得る影響を把握する必要があると述べている。

物議を醸す中国の「欧州における重要なインフラ投資、そして北極圏やアフリカだけでなくサイバー空間でも高まっている同国の存在感」に言及しながら、ストルテンベルグ事務局長は、「これはNATOが管轄を太平洋に移行するということではなく、中国の影響力が接近してきているという現状に対応するということである」と説明している。

同事務局長はまた、「そのため、NATOが中国の台頭に対処することが重要であり、特に同地域で協力関係を結んでいるオーストラリアやニュージーランドだけでなく、日本や韓国とも緊密に連携することでこれを実現する」と語っている。

(写真:2019年8月7日、オーストラリアのシドニーでNATOのイェンス・ストルテンベルグ事務局長と会談するオーストラリアのスコット・モリソン(Scott Morrison)首相(右))

南シナ海では例によって中国が二国間関係をうまく利用して分割統治を試みる作戦を積極的に繰り広げているが、その同国の拡張主義を封じ込める方策をNATOがインド太平洋地域の提携国やASEAN(東南アジア諸国連合)加盟国10ヵ国から学べる可能性もある。こうした攻撃性に対抗するため、ASEAN加盟国は相互に、そしてインド太平洋地域の他の諸国とさまざまな二国間防衛・安保協定を強化し、同地域における多国間安保協定の実現に向けて取り組んでいる。最終的には、ブルネイ、ビルマ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの加盟国10ヵ国で構成されるASEANが本格的な多国間安保組織となると、アナリストの多くは予測している。

2019年3月に大西洋評議会のウェブサイトに投稿されたブログの中で、リトアニア外務省のルーカス・トラキマヴィシウス(Lukas Trakimavicius)経済安保専門家は、「安保の利益と価値という2つの同等に重要な柱」に基づき1949年に結成されたNATOの教訓により、インド太平洋諸国にメリットがもたらされる可能性があると述べている。

トラキマヴィシウス専門家はNATOについて、「自由、人権、民主主義に対する共通の信念が加盟諸国を結び付ける結合組織としての役目を果たし、これにより大西洋の両側から迫ってきた地政学的な変化と政治的な嵐の両方を乗り切ることができた」と説明し、「同盟諸国は常に状況に応じて立ち上がり、困難な協議を通じて意見の不一致を解消し、絆を強めてきた」と述べている。

「NATOが長年にわたりこうした優れた任務を成功裏に遂行してきたという事実は、歴史的な価値があるだけでなく、NATOが今日直面する課題における重要なガイダンスの源でもある。そのため、現代の諸国首脳陣はこれを認識して理解する必要がある」

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